『睡眠薬を飲み続けていてやめたい人にむけて』
厚生労働省の国民健康・栄養調査で日本人成人の20%が慢性的な不眠を、15%が日中に過剰な眠気を感じているという結果が出ていることをご存知でしょうか?
この調査結果からも睡眠障害は国民病であると考えられます。
睡眠障害の原因
不眠症の発症要因としては、精神的なストレスや疲れ、時差、就寝環境の照度・騒音の程度(明るすぎる、うるさすぎるなど)、アルコールやカフェインなどの摂取を例に挙げることができます。
過眠症は、睡眠の質が何かしらの状況で障害されており、寝てはいるものの十分な休息が取れていないことで発症することがあります。
また、睡眠障害は体内時計が乱れることから、昼夜の生活リズムが逆転してしまうこともあります。体内時計は「メラトニン」と呼ばれる物質で調整されていると考えられていますが、これには日光や光などが深く関係します。そのため、夜遅くまで活動し、朝方の光を浴びないなどの状態が続くことで体内時計が乱れやすくなり、睡眠障害の発症につながります。
睡眠障害の症状
睡眠障害のタイプにより症状はさまざまですが、不眠症は以下の4つのタイプに分かれます。
- 入眠障害(横になってからなかなか睡眠に入ることができない)
- 中途覚醒(入眠することができても、深夜に何度も目が覚める)
- 早朝覚醒(予定した起床時間よりも早く起きてしまい、再度寝付くことができない)
- 熟眠障害(眠りが浅く熟睡したという感覚が得られない)
過眠症も睡眠障害のひとつですが、日中の過度の眠気を症状とします。
睡眠障害を発症すると、睡眠不足から日中に集中力の低下や居眠りなどが生じ、学業や仕事などにおいて多大なる支障を来すようになります。さらにうつ病などの発症につながることもあります。
睡眠薬を飲み続けているとどうなるのか
睡眠薬は内科や婦人科、整形外科だけでなく、皮膚科や眼科など何科の医師でも処方することができます。このように「眠れるお薬」をかかりつけ医から処方されて飲み始める人は多いでしょう。かかりつけ医が不眠症の専門医ではない場合、その不眠症状の状態や原因を的確に把握して、適切な薬の処方ができていない可能性もあります。
効果が乏しいまま睡眠薬を飲み続けたり、数種類の睡眠薬を併用したりすると、ふらつきやめまいといった副作用が表れることがあります。また、長期にわたって睡眠薬を飲み続けている場合、不眠が治っていないのに自己判断で薬の量を急に減らしたり、服用をやめたりすると、体の震えや不眠の悪化など「離脱症状」に悩まされることもあります。漫然とした長期の使用を避け、医師の指示の下でゆっくり時間をかけて減らしていくことが大切です。
睡眠薬を飲ずに眠るには
眠れないときに、すぐに睡眠薬に頼るのではなく、生活スタイルを工夫してみることも不眠症対策のひとつです。そして、自律神経のバランスを整えることが大切です。自律神経には交感神経(体を興奮状態に持っていき活発に動かそうとする神経)と副交感神経(体をリラックスさせ休ませようとする神経)があります。
昨今、慌ただしい生活の中で交感神経優位の体になってしまっていて、夜寝るとき、つまり体をリラックス状態にしたいときに副交感神経がうまく作用できない体の人が多くいるため、まずは以下の点に気を付けて生活をしてみましょう。
寝室環境を整える
暑すぎたり寒すぎたりすれば、睡眠の妨げとなります。快眠を得られやすい室温は、夏は25~27度くらい、冬は14度~20度くらい、湿度は、50%~60%ぐらいです。エアコンや扇風機、加湿器などを調整して快適な温度と湿度を保つように心がけてみてください。また、明る過ぎても暗すぎても良質な睡眠はとれません。月明り程度の明るさの室内で眠るようにしましょう。
定期的に運動をする
なるべく定期的に運動をしましょう。ウォーキングなどの適度な有酸素運動をすれば寝付きやすくなり、睡眠も深くなります。
食事は睡眠の1時間前までには終わる
規則正しい食生活をしましょう。就寝前に食事をすると、胃腸が食べた食事の消化吸収に追われ、睡眠の妨げになります。食事は、睡眠の1時間前までには終わらせるようにしましょう。仕事などで食事の時間が遅くなる場合は、油ものは避けて、消化の良いものを食べるように心がけましょう。
- カフェインの摂り過ぎに注意する
カフェインの覚醒作用は8~14時間持続すると言われています。夕方以降は、カフェインを摂り過ぎないようにしましょう。
- 寝床での考え事は控える
昼間の悩みを寝床に持っていかないようにしましょう。悩み事は誰にでもあり、ついつい夜寝床に入ると考えこんでしまいますが、今考えてもすぐに答えの出る悩み事はないはずです。リラックスできる音楽を聴いて、気持ちを落ち着かせましょう。
湯船に浸かろう
毎日寝る前に適度な温度(38℃~40℃)のお湯にゆっくり入浴し体を温めましょう。
まとめ
睡眠薬は眠れない苦痛から解放してくれる魔法のような薬ですが、頼りすぎてしまうと依存という睡眠薬から抜け出せない状況を作り出してしまう薬でもあります。専門医のもと、適切に睡眠薬を使うことを心がけるとともに、睡眠薬を飲まなくても眠れるような環境や生活リズムを適切に整えることが、快適な睡眠には最も近道なのです。まずは、規則正しい生活を送ることから始めてみましょう。